携帯電話

心に浮かんだことをそのまま書いた妄想文です。

 

 

私のiPhoneはメルカリで買った中古品だ。

新しいと商品説明にあったから、新古品と言うべきか。

そして保証期間はとうに過ぎている。

だからどこに苦情を言えばいいのかわからない。

 

私のiPhoneから水が溢れて困るんです。

逆さにして全部こぼそうと思っても、溢れてきて止まらないんです。

真っ黒い画面から水が溢れてくる。

生活防水ではあるが、これほど溢れていると支障があるのでは無いかと思う。

 

画面に触れられないので、私はSIRIに呼びかけて、メールを読んでもらう。

調べたいことを問いかける。

SIRIの言葉は水の音に紛れて聞こえにくいけれど仕方ない。SIRIなりに頑張ってくれているのだから。

 

そうかと思えば、ピタリと止まる。止まったはいいが、次にいつ溢れてくるのかわからないので、やっぱりiPhoneを使いづらいことに変わりは無い。

携帯電話だというのに、携帯出来ないのが一番の難点だ。

 

水は無色透明で「水」としか言えない液体だ。

飲めるのかもしれないけれど、飲んだことはない。

触るとひんやりしていて、泉を思い出させる。

画面の奥をよく見れば、水が湧き出るところが見えるかもしれない。

 

湧き水には魚は住まないだろうか。

水清ければ魚住まずとかいうことだし、多分生物のざわめきもなく、無機物だけが踊る静かな場所なのだろう。

 

私のスマホからは水が溢れてくる。

生命の欠片が入らない、ただの水だ。

きよらかな、日の光を反射して湧き出すその水は、いのちを感じさせる。矛盾していると思う。

 

夜に、私はiPhoneから流れ出る水の音を聞きながら眠りにつく。

私はずっと水の側に住みたかったんだっけ。

そんなことを思い出しながら、iPhoneが夢をかなえてくれたようだと少し嬉しくなる。

 

私のiPhone。

おやすみなさい。

水が溢れていても、明日に水が止まっていても、私のiPhoneはいつまでも大事な私のiPhoneだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました